株式投資で検索上位の銘柄を確認していると「増担保規制」や「増し担」という言葉を目にすることがあるかもしれません。
増担保規制は株式投資の信用取引において重要な言葉で、簡単に説明すれば信用取引をするために必要なお金が増えるので、新規に買いが入りにくい状態のことです。
信用取引と聞くと「自分は現物で投資をしているから関係がない」と思う人もいるかもしれませんが、増担保規制は株価に影響を及ぼす可能性もあるので、現物で投資をしている人でも増担保規制の銘柄に投資をするのであれば理解しておく必要があります。
この記事では、
「なぜ増担保規制を実施するのか?」
「何を基準に増担保規制をかけるのか?」
「どのように増担保規制について調べるのか?」
3つの疑問について解説していきます。
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増担保規制(増し担保規制)とは
増担保規制とは信用取引の規制の1つです。
増担保規制がおこなわれると信用取引をする際にかかる委託保証金が増加します。
信用取引で株式を購入する場合は、購入価格の30%の保証金が必要になります。
例えば、株式を1,000万円分購入した場合は、300万円の委託報奨金がかかるということです。
しかし、増担保規制がおこなわれると委託保証金の割合が増加します。
増担保規制後に委託保証金が50%になったと仮定すれば、1,000万円の株式を信用取引で購入する場合の保証金は300万円から500万円に増加することになります。
つまり、増担保規制が実施された銘柄は必要な保証金の額が増加するので新規に信用取引で買いが入りにくい状態になるということです。
そのため、増担保規制の銘柄は買いが入りにくいので株価が下落する、増担保規制が解除されると株価が上昇するのではないかと考えられるのです。
もちろん、増担保規制が実施されても株価が上昇するケースもありますし、増担保規制が解除されても株価が下落し続けるケースもあるので、増担保規制が必ずしも株価に大きな影響を与えるとは限りません。
しかし、信用取引であっても、現物取引であっても、増担保規制がおこなわれているかどうかは投資判断の1つとして考えることが可能です。
銘柄を分析した際に増担保規制がおこなわれているのであれば、今後株価が下落する可能性を考えて投資のタイミングを増担保規制後にすることもできるでしょう。
増担保規制を実施する2つの理由
そもそも増担保規制を実施する理由とは何でしょうか?
増担保規制はJPXグループ(日本取引所グループ)が基準を定めて実施します。
まずは、なぜJPXグループが増担保規制を実施するのかについて確認していきましょう。
JPXグループが増担保規制を実施する理由は主に2つあります。
- 株価を抑制するため
- 投資家保護のため
1,株価を抑制するため
増担保規制は株価が急激に上昇した銘柄に対して実施されます。
JPXグループは株価が急激に上昇した銘柄に対して2つのステップで株価の抑制をはかります。
1. 日々公表銘柄のリストに追加される
2. 増担保規制の実施
信用取引によって株価が急激に上昇した銘柄は日々公表銘柄のリストに追加されます。
信用取引で株価が急上昇した銘柄は投機的な取引に利用される可能性が高いです。
日々公表銘柄は投資家に注意喚起を促す目的で公開されます。
株価を抑制するための最後の手段が増担保規制になります。
先ほど説明した通り、新規で信用買いが入りにくくなるので株価が上昇しにくくなるので株価の抑制が期待できます。
このようにJPXグループは株価を抑制するために増担保規制を実施します。
2,投資家保護のため
それでは、なぜJPXグループは株価の上昇を抑制しようと考えるのでしょうか?
株価の上昇を抑制する理由としては投資家を保護することが理由にあげられます。
株価が急激に上昇した銘柄に規制がかからない場合は、株価は短期間で大きく上昇する可能性があります。
しかし、際限なく上昇する株式はなく、短期間で大きく株価が上昇した銘柄は空売りで利益を得る投資家も多く発生するため下落の幅が大きくなることが多いです。
株式の購入のタイミングによっては大損をする場合や、信用取引の場合は立ち直れないほどの借金を背負う可能性もあります。
このような市場は健全とはいい難いので、JPXグループは市場を健全に保つ必要があります。
株価を抑制することで少しでも上昇の幅を下げることができれば、株価の下落の幅も抑制できるので投資家の損失を減らすことが可能です。
JPXグループは投資家保護のために増担保規制を実施し株価を抑制しています。
増担保規制の実施基準
それでは、JPXグループは何を基準に増担保規制をかけるのかについて解説していきます。
下記の4つの基準を参考に増担保規制を実施します。
* 残高基準
* 信用取引売買比率基準
* 売買回転率基準
* 特例基準
残高基準
日々公表銘柄に指定した銘柄で、次のイロハの基準に1つでも該当する銘柄は増担保規制の対象になります。
* イ:売残高の上場株式数比率が15%以上かつ売り残が買い残に対して70%以上
* ロ:買残高の上場株式数比率が30%以上かつ3営業日連続して各営業日の株価と各営業日時における25日移動平均株価との乖離が30%以上
* ハ:「特別周知銘柄」に公表されている銘柄で売残高の上場株式数比率が15%以上または買残高の上場株式数比率が30%以上
売残高の上場株式数比率が15%以上または買残高の上場株式数比率が30%以上という条件が重要であり、2つの条件のうち1つを満たしている場合は上記の3つの条件のうち1つも満たしている可能性が高いです。
特別周知銘柄はJPXグループのホームページから確認することができます。
また、増担保規制は第一次措置と第二次措置と第三次措置と第四次措置の4種類があり、措置がおこなわれるたびに委託保証金の割合が増加します。
残高基準においてもそれぞれ別途に条件が指定されていますが、多くの銘柄が第一次措置までの条件しか満たさないので、第二次措置がおこなわれることはあまりなく、第三次措置、第四次措置が実施されることはほとんどありません。
そのため、この記事では残高基準も含めて第一次措置の条件と第二次措置の条件に限って解説します。
第二次措置がおこなわれる残高基準の条件は下記の通りです。
- イ:売残の上場株式数比率が20%以上かつ売残高の対買残高比率が80%以上
- ロ:買残の上場株式数比率が40%以上かつ3営業日連続して各営業日の株価と各営業日時点における25日移動平均株価との乖離が30%以上
- ハ:「特別周知銘柄」に公表されている銘柄で売残の上場株式数比率が20%以上または買残の上場株式数比率が40%以上
それぞれ細かな条件があり、イの条件では売残高が第一次措置の実施基準該当日から売残高が2.5%以上、ロの条件では買残高が5%以上増加している必要があります。
第二次措置のハの条件は第一次措置のハの条件を満たして増担保規制がおこなわれたことが条件になります。
信用取引売買比率基準
各営業日の売買高が1,000単位以上であること、3営業日連続して各営業日の株価と各営業日時点における25日移動平均株価との乖離が30%以上であることを満たしたうえで次の2つの条件のうちいずれかを満たすと増担保規制の対象になります。
- イ:3営業日連続して信用取引の新規売付比率が20%以上
- ロ:3営業日連続して信用取引の新規買付比率が40%以上
第二次措置は、第一次措置がおこなわれたうえで次の条件を満たした場合に実施されます。
売買回転率基準
1営業日の株価と当該営業日時点における25日移動平均株価との乖離が40%以上である場合に次のいずれかの条件に該当すると増担保規制の対象になります。
- イ:当該営業日の売買高が上場株式数以上かつ当該営業日の信用取引の新規売付比率が30%以上
- ロ:当該営業日の売買高が上場株式数以上かつ当該営業日の信用取引の新規買付比率が60%以上
第二次措置は、第一次措置がおこなわれたうえで次の条件を満たした場合に実施されます。
特例基準
残高基準、信用取引売買比率基準、売買回転率基準のいずれの条件に該当しない場合でもJPXグループが必要であると判断した場合は特例基準で増担保規制が実施されます。
3つの基準に特例基準を加えた4つの基準が、増担保規制を実施する基準です。
次は、増担保規制解除の条件について解説していきます。
増担保規制解除の条件
増担保規制解除の条件ですが、次の3つの基準を満たした銘柄が増担保規制を解除することができます。
* 残高基準
* 株価基準
* 特例基準
残高基準
増担保規制を解除するためには信用取引の残高に関する下記の条件をすべて満たす必要があります。
* 5営業日連続して売残の上場株式数比率が12%未満
* 5営業日連続して買残の上場株式数比率が24%未満
増担保規制の残高基準はいずれかの条件を満たすことでしたが、解除の残高基準はすべての条件を満たす必要があるので注意が必要です。
株価基準
増担保規制を実施する目的は株価を抑制することが目的なので、株価にも基準を設けています。
株価の基準は5営業日連続して各営業日の株価と各営業日時点における25日移動平均株価との乖離が15%未満であることが条件です。
重要なのは5営業日連続して基準を満たす必要があるので、条件を満たした日数の合計が5営業日では解除されず、4営業日連続で条件を満たしても5営業日目に条件を満たせない場合は1営業日目からやり直しになります。
特例基準
実施の基準と同様にJPXグループが2つの解除基準を満たしても増担保規制を継続するべきであると考えた場合は増担保規制が解除されません。
増担保規制を解除するためには残高基準、株価基準、特例基準の3つの基準をすべて満たす必要があるということです。
ここまで実施基準と解除基準について解説してきましたが、第二次措置、第三次措置、第四次措置の実施基準や細かな条件はJPXグループが発表している「信用取引に係る委託保証金の率の引上げ措置等に関するガイドライン」に掲載されています。
増担保規制には措置の段階があり委託保証金の割合が異なることを解説しましたが、具体的にそれぞれの措置の委託保証金の割合がどのように変化するのか解説していきます。
増担保規制の委託保証金
増担保規制によって設定される委託保証金はJPXグループにより指定されますが、措置の段階によって保証金の割合が異なります。
それぞれの措置の委託保証金率とその内の現金率について下記の表にまとめました。
措置の内容 |
委託保証金率 |
現金率 |
第一次措置 |
50% |
20% |
第二次措置 |
70% |
40% |
第三次措置 |
90% |
60% |
第四次措置 |
100% |
80% |
増担保規制の銘柄は委託保証金を定められた割合で現金で支払う必要があります。
つまり、第四次措置がおこなわれた場合はほとんど現金で購入するのと変わりません。
また、委託保証金は必ずこの割合で取引できるわけではなく、各証券会社の判断によって委託保証金率の割合が引き上げられることもあるので、証券会社によって委託保証金の割合が異なることもあります。
最後に増担保規制の銘柄を調べる方法について解説していきます。
増担保規制の銘柄を調べる方法
増担保規制の銘柄を調べるには、JPXグループの「信用取引に関する規制等」のページを確認するのが確実です。
こちらのページでは規制されている銘柄、増担保規制の実施日、増担保規制の内容、増担保規制の該当基準が示されているためおすすめです。
また、増担保規制が解除された銘柄に関しても解除後1週間程度掲載されており、解除日と解除前の規制内容が確認できます。
JPXグループの増担保規制のページをチェックすれば、現在の増担保規制の銘柄と規制内容、増担保規制のかかった銘柄の解除されたタイミングを知ることが可能です。
自分が投資している銘柄や、投資をしようと考えている銘柄が増担保規制の対象になっているかどうかはJPXグループのホームページを見ればすぐ判断することができます。
増担保規制のまとめ
今回の記事では増担保規制について解説しました。
増担保規制はJPXグループが投資家保護のために株価を抑制するための規制で、JPXグループが実施基準と解除の条件を設けています。
増担保規制の銘柄はJPXグループから確認できるので銘柄を分析する中で「増し担」という言葉を見かけた場合はJPXグループにその銘柄が掲載されていないか確認しましょう。
信用取引をしている人はもちろんですが、現物取引しかしていない人でも株価の動向に関わることなので理解しておきましょう。
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